初恋パレット。~キミとわたしの恋の色~
前夜祭がはじまって、そろそろ20分。
もう来てもいいくらいだと思うんだけど、百井くんはいったい、どこでなにをしているんだろう。
「待ちぼうけとか、百井くん、ほんっと鬼だよね。いくら手作りの神社っていっても、暗いし雰囲気があって、ひとりで待つにはけっこう怖いんだってば……」
怖さを紛らわすためにブツブツと文句を言いながら、腰を上げていったん、教室の外に出てみる。
けれど、左右の廊下に目を凝らしてみても百井くんの姿どころか人の気配すらなく、耳を澄ませてみても、バンドの演奏が思いのほかここまで響いていて、たとえ足音が聞こえていたとしても、わたしの耳ではそれを聞き分けることもできそうになかった。
「ほんと、どうしたんだろう……」
次第に百井くんになにかあったんじゃないかと嫌な想像が掻き立てられて、ひとりで待つ心細さも相まり、どんどん不安になっていく。
遅れるなら遅れるで連絡が入ってもいいはずなんだけれど、それもないとなると、不安感はますます煽られる。
「もしかして、旧校舎……?」
百井くんがいそうなところでパッと思いつくのは、彼がいつも使っている、旧校舎の美術室だった。