初恋パレット。~キミとわたしの恋の色~
でも、あそこには電気が通っていないし、もし本当にそこにいたとしても、真っ暗な中でいったいなにができるんだろう? なにをしているんだろう?
それでも、まさかと思いながらも、足が勝手に旧校舎のほうに進路をとる。
リノリウムの床に擦れる上履きの足音が徐々に早く強くなっていき、旧校舎につながる廊下までたどり着いたときにはもう、わたしの息はハァハァと上がっていた。
「なに、あのオレンジ色の光……?」
すると、廊下の先にゆらゆらと揺らめく光が見えた。
それはいつも百井くんが使っている美術室のあたりから漏れてくるもので、人工的ではないというか、なんというか……ろうそくの炎のような、そんな印象を受けた。
「ほんとにいるし……」
腰に手を当て、鼻から息を吐き出し、悪態をつく。
ここは基本、百井くんしか使わないから、べつにいてもいいんだけれど、それならそうと、どうして美術室にいると連絡を入れてくれなかったんだという気持ちが、ふつふつと湧きあがる。
まさか忘れていたわけでも、ましてすっぽかすつもりだったわけでもあるまいし、教室に来なかったら探されることくらい、百井くんだって少し考えればわかるだろうに。