初恋パレット。~キミとわたしの恋の色~
 
「でも、本当によかったの? 持田先生からも、ちゃんと部に戻って、絵もコンクールに出しなさいって言われてるんでしょ? それなのに、今のままでいいとか……。全部私のせいなんだけど、それでも、ナツくんにはきちんとした環境で絵を描いてほしいって思ってるんだよ?」


すると、今までの和やかな空気から一変、先輩はきっとこれを言うために百井くんを探していたのだろう言葉が、痛切に投げかけられた。

美術部内でのことは、わたしは知らなかったから、百井くんを見あげて思わず「え?」と声が出る。

そうすると百井くんは、バレたか……とでも言いたげな視線をわたしによこし、口の端を少しだけ持ち上げると、瞳を揺らす先輩に向き直った。


「そのことだったら、本当に今のままでいいんです。もともとオレはニナの写真を絵に描いてみたくて水彩画をはじめたんで、それ以上の目的はないんですよ」

「でも……」

「いいんです、マジで。オレにとって旧校舎の美術室は特別です。みんなが使う美術室で絵なんか描いたら、ニナとまったり、のんびり過ごす時間が減るんです。先輩はさっき、もう1年って言いましたけど、オレからすれば、ニナを独占できる時間はあと1年しかないんです。そんな貴重な時間を一番大事なニナと過ごさなくてどうすんですか」

「……」

「……」
 
< 254 / 260 >

この作品をシェア

pagetop