初恋パレット。~キミとわたしの恋の色~
ほっとして気が緩んだのか、自分でもなんで涙なんか出ているのかわからないまま、ついでに出てきた鼻もズスッとすする。
百井くんに寂しいんだと気持ちが伝わったところで、どうこうなるわけでもないのに、なんでこんなにも泣けてきちゃうんだろう。
ほんと、どうして涙なんて……。
「てかニナ、なんか勘違いしてる?」
「へ?」
その声に、思わずブサイクな顔を百井くんに晒しながらマヌケな声で聞き返してしまうと、彼は困ったような顔をしてわたしのマヌケ顔をじっと見ていた。
わたし、なにか勘違いしてるの? でも、なにを?
意味を理解しかねて、パチパチと数回、目をしばたたかせると、呆れを含んだ顔で百井くんは言う。
「オレ、掃除が終わったからって、ニナにもうここに来るななんて言わない」
「そうなの!?」
……え、そうなの? わたし、まだここにいていいの? 明日からもなにも用事がなくても美術室に来ていいの?
全部わたしの早とちり?
これ以上はないっていうくらいに見開いたわたしの目に、ぼやけた百井くんが映る。
百井くんはなんだか、この美術室でだと表情も口調も穏やかで、教室での姿とはまるで別人だ。