初恋パレット。~キミとわたしの恋の色~
小さくうなずいた百井くんは、また口を開く。
「ニナ面白いし、一緒にいると飽きない。不良って呼ばれるオレなんかにも普通に話してくれるし、それに、頼みたいこともある」
「頼みたいこと……?」
「モデル。だから明日からもニナはここ」
そう言うと、百井くんは、とん、と床に軽く左手を付く。
その手に目を向けると、ヤンキーには似つかわしくないほどに指が細く長く、長身の彼にすれば華奢にも見えることに初めて気がついた。
男の子特有のホネホネした関節もあまり目立ってはおらず、でもちゃんと〝男の子の手〟をしていて、もちろんケンカ跡のような傷もない。
身長と比例して、大きいだけ。
そういう手の持ち主である百井くんが、これから絵を描き始めるにあたって、わたしにモデルを頼んでいることがいまだに信じられない。
百井くんの綺麗な手で描かれる絵の、モデル。
うれしいような、くすぐったいような、恥ずかしいような、ドキドキするような……。
いろんな気持ちが一気に胸に溢れて、ともすれば窒息してしまいそうなくらい息苦しい。
「ニナ」
なかなか返事をしないわたしの顔を不思議そうに覗き込み、百井くんが名前を呼んだ。