Secret Mission
拓弥は初め、水樹の言っていることが理解できなかった。
いつも普通に笑ったり怒ったりしていた彼らが薬をやっていただなんて信じられなかった。
でも、それ以上に、水樹がなぜ知っているのか、それが信じられなかった。
「……どういう、ことだよ。」
「どういうって…そのままの意味ですよ?彼らは薬をやってるからそれを上の方々に言って、退学にしてもらうんです。」
「……そんなこと、俺にだってわかる。なんで…なんでお前がそんなこと知ってんだよ。」
水樹は拓弥の戸惑いようから…ああ、本当に知らないのか。そう確信した。
一応渡辺達とつるんでいたため嘘を言っているのではないかと思ったが、そんなこと無かった。
「……独自調査の結果ですよ。」
「…独自……調査。」
ええ。教えませんけど。水樹は笑みを崩さずに言う。
「あ、そうだ。取引しません?」
「………取引?」
「ええ、貴方は白沼さんのことを僕に教える。僕は彼らがやっている悪さについて教える。…いい案だと思いますけど?」
「…………考えさせてくれ。」
「あーストレッチ終わったようだな。」
そこでまたもや先生の邪魔が入る。
全体を見回しながら言った先生は皆に集合をかける。
「…この話はまた後で。」
水樹は拓弥にしか聞こえない声で呟き、先生の方へ駆け寄っていった。
拓弥は水樹とは違い歩きながら先生の方へ行く。
周りの生徒も歩いている奴が大半だったが、時間があまり無いためか、先生は生徒達を急かす。
「うし、集まったな。んじゃあ、今日は100m走をやるぞ。
そろそろ体育祭も近いからな。2学期は行事が詰まってるんだ。
あんまり練習できないかも知れないが、手を抜かないように!」
―――へぇ、体育祭かぁ…。どうしようか、体動かすのは好きだし、ヘタレキャラだけど運動神経はボチボチっていう設定で行こうかな。
先生の話を聞きながら、水樹は考え事をする。
それがボーッとしているかのように見えたのか、先生に注意されたが、すみませんと謝っておけばすぐに解放された。
「あー…そうだな、さっきのペアと他のペア、合わせるか。今のまま行ったら時間足りないだろうし……四人ずつ走るぞ。はい、四人組作れ。」
その言葉に皆素早く動く。水樹もまた、拓弥と共に他のペアを誘おうとするが、それを止める2つの組がいた。
「熊野、やっほ。ペア組まね?」
そう声をかけてきたのは千葉春。後ろには少し、千葉の行動に驚いたのか、目を見開いている男がいた。
「水樹ー。一緒に組も?」
こっちは、那珂燈蔭と村松和人。