婚約者はホスト!?①~永遠の愛を君に~
それから更に一カ月が過ぎ、田島との婚約披露パーティーの日を迎えた。
「なつさん。お着物がよく似合っていますね」
ホテルへと向かう途中、田島が運転席からなつに声をかける。
「ありがとうございます」
なつは素っ気なく答えると、またすぐに窓の外へと視線を戻した。
田島が賢三の秘書になって5年が経つ。
亡くなった田島の父が賢三の親友だったこともあり、賢三は田島が大学を卒業すると、彼を第一秘書として自分のそばにおいたのだ。
田島は何でもそつなくこなす完璧な男。
銀縁の眼鏡がさらに知的な印象を与える。
「なつさん、着きましたよ」
いつの間にか、車はホテルの前に停車していた。
なつは田島にエスコートされ、パーティー会場へと向かった。
「田島さんは、私との婚約の話をどうしてお受けになったんですか」
ホテルの廊下を歩きながら、なつが問いかけた。
「そうですね。先生は日頃から私になつさんと結婚して自分の後継者になって欲しいとおっしゃていましたから。私にとっては自然のことでしたけれど」
「勝手に結婚相手を決められて、嫌じゃなかったんですか?」
「いいえ、全く。私には先生のような立派な政治家になるという夢がありましたし、何よりなつさんのことをずっとお慕いしておりましたからね」
田島の熱い視線を感じてなつは俯く。
「そ、そうですか」
「どうやら、鈍感ななつさんには私の想いは伝わっていなかったようですね。先生はお気づきになっておられましたけれど」
なつは田島の気持ちを知って動揺していた。
お互いに割り切った結婚の方が、まだマシだったのかもしれない。
なつは複雑な想いを胸に、パーティー会場へと向かったのだった。