婚約者はホスト!?①~永遠の愛を君に~
「それでもやっぱり圭司のことが好き。ニセモノの愛情だったのかもしれないけど、圭司は私を大事にしてくれて、私にはすごく幸せな時間だったの。私にとっては一生に一度の恋だった。だから、最後に最高の思い出を作りたい」
「なっちゃん……」
拓哉は小さく言葉を漏らした。
なつはそんな拓哉を見つめ、一呼吸置いてからこう続けた。
「拓哉さん。教えて。圭司に抱いてもらうには、いったいいくら払えばいいの?」
拓也は思わず飲んでいたコーヒーを吹き出していた。
「な、なっちゃん。なんてこと言い出すんだよ」
突拍子もないなつの発言に拓哉は動揺を隠せない。
「私は本気よ。お客としてでいいから圭司に抱かれたいって思ってる。圭司だって、ホストとしてなら誰でも抱くんでしょ? この前、拓也さん、私にそう言ってたよね?」
「なっちゃん。一旦落ち着こっか。ちょっと話がおかしなことになってるから」
拓哉はなつの腕を掴み慌てて首を振る。
すると、なつの目からポロポロと涙かこぼれ落ちた。
「だって……私にはもう時間がないから」
「えっ……。それって、どういう意味?」
拓哉は泣き出したなつの顔を覗き込み懸命に問いかける。
「私……もうすぐ父の秘書と結婚させられるの。彼は代議士をしてる父の後継者になるから……」
「は? それって………好きでもない奴と無理やり結婚させられるってこと?」
「そう……。だからその前に、どんな形でもいいから初めてを圭司に捧げたいの。拓哉さん、お願い。私に協力して」
なつの言葉に拓也は絶句する。
「そ、それは………できないよ」
拓哉は苦しげに顔を歪めた。
「だって、そんなの間違ってる。愛のない結婚も、お金で響さんを買うことも、絶対にしちゃダメだ。なっちゃん、もっと自分を大事にしなよ。傷つくのはなっちゃんなんだからさ」
「もう決めたことだから」
「なっちゃん……とにかく冷静になって」
「私は冷静だから……」
結局、拓哉がいくら説得しても、なつの決心が変わることはなかった。