婚約者はホスト!?①~永遠の愛を君に~
と、その時だった。
「レン。もういいから、早く行け」
圭司がレンをなつから引き剥がし、恐ろしい顔で睨みつけていた。
「いいんですか、響さん。麗奈さんの機嫌損ねちゃいますよ?」
「いいから、どけよ」
さすがにレンも席を立った。
「なつさん、また今度ゆっくり」
レンは懲りずにそう言うと、笑顔で去って行った。
「ほんと、営業妨害だな」
圭司は席につくと、なつに冷ややかな視線を向けた。
「しつこくして、ごめんなさい」
ウロウロするなと言われている手前、なつは思わず謝っていた。
「で? 今日は何? 婚約者がいるのに男遊びか?」
圭司は皮肉っぽく問いかけた。
「あ、あのね。今日は圭司にお願いがあって来たの」
なつは思いつめたような顔で口にした。
覚悟を決めてやって来たけれど、いざ本人を目の前にして怖じ気づいてしまったのだ。
そんななつの様子を見て、圭司は飲んでいたシャンパンをテーブルにおいた。
「なに? ヨリなら戻す気ないけど?」
「ち、違うの。わ、私と…シて欲しいの…」
「ん?」
圭司は顔をしかめた。
なつの声が小さ過ぎて聞こえなかったのだ。
「だから………。圭司に抱いて欲しいの」
「は?」
圭司は驚いた表情で固まった。
「も、もちろん、お金ならちゃんと払うから」
なつの言葉を聞くと、圭司はすぐにホストの顔に戻った。
「ふーん。なるほどね。別にいいけど」
今度はなつの目が大きく開いた。
まさか圭司が本当にこの話を受けてくれるとは思っていなかったからだ。
「ほ、本当にいいの?」
「ああ。ホストとしてなら抱いてやるよ。でも……俺、けっこう高いけど?」
「う、うん。いくら……出せばいい?」
すると、圭司がニヤリと笑った。
「100万」
「へっ?」
「俺の一晩の値段だよ。どうする? 払えないならこの話は」
「あっ、大丈夫…ちゃんと持ってきてるから」
なつのバックにはピッタリ100万円が入っていた。
ホストのひと晩の値段なんてなつには見当もつかなかったけれど、自分の全財産を銀行から下ろしてやって来たのだ。
白い封筒を出したなつを見て、圭司はフンっと鼻で笑った。
「へえ……さすがだね。金持ちのご令嬢は。金で男も買うんだな」
皮肉混じりの言葉が返ってくる。
圭司は軽蔑したに違いない。
なつの心はズキズキと痛んだ。
なつにしたって、こんな風にこの100万を使うはずじゃなかった。このお金は圭司との結婚資金にと貯めていたものだったのだから。
なつが涙を堪えていると、突然、圭司が立ち上がった。