婚約者はホスト!?①~永遠の愛を君に~
「ど、どこ行くの?」
「抱けって言ったの、おまえだろ? さっさとついてこいよ」
「あ、うん」
なつは急いで立ち上がり、慌てて圭司の後を追った。
「響さん。どちらに?」
「悪いけど今日はこのまま抜けるから」
「分かりました」
圭司は追いかけて来たボーイにそう告げて店を出た。
いよいよ圭司に抱かれるんだ。
なつはドキドキしながら階段を下りた。
と、その時だった。
「なっちゃん、行っちゃダメだ!」
店から拓哉が追いかけてきた。
「拓哉さん!?」
「行くなよ、なっちゃん。頼むから」
拓哉はなつの体を後ろから抱きしめた。
「離してくんない? 俺の客なんだけど」
圭司が低い声で言うと、拓哉はさらに強くなつを抱きしめた。
「響さん。なっちゃんを客としか思ってないなら、こんなことしないで下さい!!」
「お前には関係ない。部外者はひっこんでろ!」
圭司は拓哉を睨みながら、なつを拓哉から奪い取った。
「拓哉さん、ごめんね。これは私が望んだことだから」
「なっちゃん……」
「ほら、行くぞ」
拓哉を見つめるなつの手を、圭司は力強く引っ張った。
拓哉はその場に立ちつくしながら、ふたりのタクシーが走り去っていくのを茫然と見つめていた。