婚約者はホスト!?①~永遠の愛を君に~
それから数日が過ぎた。
意識を取り戻した圭司は驚く速さで回復していた。
なつは車椅子を押して病院の屋上に出た。
「風が気持ちいいな」
圭司が空を見上げながら呟いた。
なつはベンチの横に車椅子をつけて、となりに腰かけた。
「あのね、圭司」
「うん…?」
「おば様の事なんだけどね。圭司が撃たれた次の日に亡くなられたの」
「そうか。うん……」
圭司はコクコクと首を振りながら頷いた。
「圭司のおじ様と二人で見送って、お葬式も全て終わってる。なかなか言い出せなくてごめんね」
「いや、なつが謝ることじゃないよ。色々ありがとな」
涙ぐむなつに圭司は微笑みかけた。
「医者からも、もう長くないって言われて覚悟はしてたから」
「うん」
「そうそう。俺が意識を失ってた時にさ、母さん夢に出てきたんだよ。おまえはちゃんと生きてなつと幸せになれって……言われたような気がする」
「そっか」
なつは両手を顔を覆い泣き出してしまった。
圭司はなつの体を片手でそっと抱き寄せた。
「あのハンカチもおば様が作ってくれたんだよね?」
「ハンカチ? ああ。あれな。たまたま部屋で見つけたんだよ。なつのイニシャルだったから、なつに渡して欲しかったんだとろうと思ってさ」
「うん。大事にするね」
なつは涙をぬぐいながら呟いた。