婚約者はホスト!?①~永遠の愛を君に~
「それで……オヤジの方はいったいどこにいるんだ? 見舞いにも来ないとか薄情過ぎないか?」
思い出したように圭司が口にした。
「あ、それがね。『しばらく旅に出るから息子をたのみます』って行き先も告げずに消えちゃって」
「まったく。相変わらずだな」
圭司は呆れたように笑った。
「でも、心配だよね。青龍会が一斉摘発されたんだから、おじ様だってどうなるか。だってほら、覚醒剤を売ったり使ったり……してたんでしょ?」
なつはずっと気がかりだったのだ。
自首を勧めればよかったと悔やまれた。
「ああ、大丈夫だよ。親父は覚醒剤には手を出してないから」
「えっ? そうなの?」」
「そう。田島が仕掛けてきた罠だと思ったから、親父にはワザと話に乗ってもらってたんだよ。俺が金だけ渡して、覚醒剤を売りさばいてるフリをしてもらってただけ」
「そんなことまでしてたんだ」
圭司の策士ぶりになつは驚かされた。
「親父のギャンブルの借金がさ、俺となつを引き裂く為の罠だったことに気づいた時に色々と考えたんだ。黒幕の田島を社会的に抹殺するにはどうしたらいいかって。それには青龍会ごと潰すしかないと思った。だから親父を青龍会に送り込んで、内情を探ってもらってたんだよ」
「そういうことだったんだね」
「けど、親父には由香里が青龍会の人間だってことを黙ってたんだよ。敵を欺くには味方からって言うからさ。母さんの担当看護師で良くしてもらってるとしか言ってなかったんだ。そしたら、それが仇になってなつに余計なことを言うからさ………あの時はマジで焦った」
なつは圭司の言葉で、いつかの悪戯電話のことを思い出した。
「もしかして、あの電話っておじ様だったの!?」
「ああ。俺が由香里に惚れてなつのことなんてどうでもよくなったと思ったらしいな。このままじゃなつが可哀相だと思ったらしい。なつが無事だったから良かったけど、もしなつに何かされてたら俺は親父を一生許さないところだったよ」