太陽に恋をして
仕事帰りの会社員やOLで混雑する改札口で、気をつけてね、と笑う柳原さんに、


「送っていただいてありがとうございました」


と頭を下げた。


「そんな。たいした距離じゃないし」


顔の前でひらひらと手を振る柳原さんが、少し照れてるみたいで意外に思った。

もしかしたら見た目ほど軽い人でも悪い人でもないのかもしれない、なんて思う。


改札を抜けて振り返ると、柳原さんがまだこっちを見ている。


「矢野さん!」


目が合うと、改札越しに柳原さんが少し声を張り上げる。


「もしよかったら、今度一緒に食事行こう」



「…食事、ですか?」


「うん。いいワイン置いてる店、知ってるから」


色素の薄い柳原さんの頬が少し赤かった。


「いいですよ」



私が答えると、柳原さんは驚いたように眉を上げたあと、にっこり笑って右手を上げた。


私はぺこりとお辞儀をしてから、ホームに向かう。


いいワイン置いてる店だって。

これってもしかしてデートっていうのかな。
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