優しい黒魔女
伸ばしっ放しの黒髪は枝毛などといったものは見当たらず、艶掛かっていて美しい。

豊かな緩くウェーブのついた髪は白のシュシュで一纏めにされている。

黄味掛かった肌はきめ細かく触り心地が良さそうだ。

大きな黒い瞳に、ちょこんと添えられた薄桜の唇は啄みたくなる。

生憎、鼻はやはり低く彫りの少ない平坦な顔立ちは彼女を地味に見せていた。



「いけない、もうこんな時間」



擂り鉢の中にある先程擦り終えたばかりの粉末を、零さないように小さな袋に入れて壁時計を見て立ち上がった。

朝から薬の調合にかかりっきりで、気付けば昼を過ぎていたのだ。

人間の体とは不思議なもので時間を自覚した瞬間お腹が空く。

可愛らしい鳴き声で空腹を訴える自身のお腹に苦笑いを零した。

さっさと簡単なものを作ってしまおうとマイコはキッチンに立つ。
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