君といた季節の中で
終りの冬
サラが仕事から帰るのが遅くなっていた。僕は淋しくて淋しくて家から草原を覗き込んで待っていた。誰かを待つのはとても時間がたつのが遅い。
早い時もあるからこれは淋しくて遅いのだろうと思った。

寒くなってきた。
夏場に近くの林から木を拾ってきて
おいて正解だった。

冬になり寒くなってきたから
暖炉を燃やすのにちょうど良かった。

こんなに寒いのに夜遅くまでサラは
市場で働いていた。
僕は、未だに街へ行こうとしなかった。

「ただいま」
「おかえり」
僕は寂しさのあまりサラにいってしまった。
「こんなに遅くなるまで働いてこなくてもいいじゃないか?暖炉を温めて待ってるんだ。早く帰ってこいよ。」

僕は少しイライラしてそういった。
お腹も空いていたんだろう。
サラは悲しくなって泣き出した。

「違うよ。探してたの。」

「誰を?」
「子供よ。私達の子供。何処かに隠れてるんじゃないかって、仕事終わってから探してたの。死んでるのにね。私が殺したのにね。」
そういってまた泣き始めました。

「泣くことないよ。明日からは僕が子供を探しに行くから。サラは仕事終わったら家に帰ってきてくれ。僕も夕方には帰るから、僕らがこうして生きてるんだから子供もどこかで暮らしてるよ。名前を教えてくれないか?」

「まさおだよ。」

「ありがとう。」
僕は、彼女を抱き寄せた。

彼女は、人殺しだ。
子供も殺してしまった。
僕は彼女を守ろうと思った。

死んだはずの子供を探す彼女には
罪の意識が消えてないのだろう。

生きてても仕方がないそうな心情を抱えてるのかもしれない。

僕と彼女の間には
僕の犯した罪と彼女の犯した罪とか
僕達が今を
生きていくための
償いのような十字架に思えた。

僕の教師としてどんな目にあって辞めたのだろうか?
もう死んだ僕には関係のない話である。

家族を守るどころか壊し
妻を人殺しにし
僕はこの世から居なくなって
僕達一家は、死んだのだから。

僕達に頼れる親戚がいなかったこと
社会的な環境
ありとあらゆる負の作用が
ここまで僕達を追い込んだんだろう。

僕が街に出たがらず
引きこもっていたのは
僕の中にあった無意識の記憶の世界と通じてるからだろう。記憶喪失。
記憶はあるけど引き出せなくなったのだ。

何もかも忘れたい僕のために
妻がその剣を僕に振り払ったのだろう。

彼女は、僕を愛していたんだろう。

大事な子供と死を選んだのは。

僕は、この冬の中色んな所に行って
まさおを探し続けた。
街にも出かけた。

誰も僕を知らないかのように
誰も僕に話しかけなかった。

僕から話しかけていった。

何の手がかりも見つけられないまま
夕方を迎えた。

サラには
「今日も探しに出かけたけど居なかったよ」と話した。
サラは
「そうなの。有難うね。」
と言い、少し微笑んだ。

そんな毎日を繰り返した。
何も見つからないまま。

僕は、子供の話が聞きたかったが
サラから、子供の話はなかった。
どんな子供だったのだろう。
僕は聞けなかった。
寂しい夜が過ぎていった。

もう少しで春なのかな。

サラとあの浜辺に春になったら行こうと約束をした。

本当に僕らは生きているかのようだった。
不思議な世界にいた。

僕らの罪がはれたら
本当にここから離れて
死の国にでも行けるのかな?

それとも一度死んだ命を救われたのかな?

もしそうなら
僕は一から出直して、仕事をして
サラと共にこれからも暮らして生きたい。

僕が春になっても生きているのなら
働こうそう思っていた。

このまま二人の生活が続けばきっと
サラも笑って幸せに暮らせると

そう思っていた。

あの春が来るまでは
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