天才少年と完璧少年…そして普通少女


つまらない授業中、隣には猫かぶりの完璧少年。
本当、キレイな顔してるなぁ…
自分の可哀想な程の普通の顔とは、比べ物にならないくらいのイケメン面だ。

「何で与永と隣の席になったんだろうな…」

「何だよ、悪い?むしろ光栄に思ったらどう、こんなイケメンと隣の席とかさ。普通じゃ出来ないよ」

…自分の苗字を恨む。
どうして始めが"ら行"の苗字何だよ。
当たり前、一番後ろになるだろ。

「…ホント、林崎さんって分かんねぇな。たいていの女子は簡単に落ちるのにさ」

皮肉っぽく呟く与永の言葉に耳を貸すこともなく、ノートにぐるぐると、落書きらしきモノを描く。

「私はごく普通なんで、この辺の特別天才の人達とは色々違うんだよ、色々な」

「へー」

そう、ここの学校は【絶対勝利】がモットーな学校。
そのため、勉強はもちろん。
どこの部活も全国レベルの超強豪校。
私の所属する吹奏楽だってそう。
毎年全国一位。
私立校だからと言う事もあるのだろうか。
練習量がかなりハードだ。
授業が終わると、全員が走る様に部活へと向かうのだ。
そんな雰囲気に耐えきれず、辞めた生徒もいるが、その場合【負け組】と貶される。
それは、部活動の生徒だけではなく

「この問題を…そうだな。…おい!負け組の古西!!これくらい解けるだろう」

先生からも、蔑まれる。だけど、その度に

「先生、言い過ぎです。あくまでも先生なんですから、人を馬鹿にする様な事を言うのは、どうかと思いますが」

こいつ、与永が無表情で口を挟む。
正直、お前が言える立場じゃねぇよ。
と思うが、何も出来ない私からしたら、すごくカッコイイな、と不意に思ってしまうのだった。

「ぬ…与永が言うなら仕方が無い…」

与永は先生を黙らせる程の実力をもっている。
部活動での輝かしい成績と、勉強面での素晴らしい成績はもはや、"完璧"だった。
彼の本心を知らない女の子達は、簡単に彼に落ちる。
だが、私はたまに思ったりする。
与永は"本当"の自分を、隠している____と。


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