メガネ殿とお嫁さま
身体が弱かった僕は、
半分温室になっている部屋を与えたられた。

和室の縁側から、
透明の屋根と壁を足し、
そこにはいつも日が差していた。

離れだけは、
改装をしても許される。

どこもかしこも古めかしく
堅苦しい家で、
ここだけが僕のオアシスだった。

植物たちは、
自分の手入れを必要としてくれる。

僕は、ここで、
植物の世話をすることが
唯一の癒しだった。

僕は、上着を脱いで、
部屋に置いた。

Tシャツに着替え、
スニーカーに履き替え、
眼鏡を置いた。

運動をする時は眼鏡を外す。
どうせ、伊達眼鏡だし、
家の敷地内を走るのだから、
顔を隠す必要はない。
外では、もちろん、かけたままだが。

もう、
祖父に怒鳴られて、
庭を一回りするのなんて、
なんてことない。

ただの日課だ。

僕は、
離れを出て走り出した。

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