不順な恋の始め方

集中しよう、と思えば思うほど

〝坂口先輩にはこの事ちゃんと言いなさいよ?〟

という涼ちゃんの言葉が頭を過って集中ができなくなってしまう。


涼ちゃんはそう言ってくれたけれど、私の口から坂口先輩にはきっと言えない。

だって、あんなに皆に慕われて、尊敬されて、頼られている人だ。

これから、色んな人が必要とする人。


私が赤ちゃんができたことを伝えれば、きっと坂口先輩の人生は大きく変わってしまう。

下手すればプライベートはもちろん、仕事にも影響し兼ねない。


……やっぱり、言えないや。言える訳がない。私なんかが人生を変えてしまっていい人じゃないから。

とても、とても、素敵な人だから。


それに私だってもう子供じゃないんだから、この先は私ひとりで考えればいいよね?



「……よし」



そう、小さく、誰にも聞こえないようにそう呟いた私はいつもどおりパソコンのキーボードを指先で打ち始めた。




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