不順な恋の始め方
そんな私の頭上から「大丈夫ですか?」と、優しく降ってきた声。それから、差し伸べられた目の前にある大きな手。
「あっ、大丈夫です。あはは、こんな所で座り込んで邪魔でしたよね。すみませ…………って、え?」
顔を上げて、すみませんと言いかけると私に手を差し伸べていたのが同じ会社の先輩だということに気がついた
営業部所属で、私の2年程先輩である坂口先輩。
会社に入った当初から、優しさといい、ルックスといい、すべてに憧れていた先輩である。
……とは言っても、きっと彼の方は私が同じ会社にいることすら知らないだろうが。
そう思った矢先に
「あ……えっと、森下さん…やんな?」
と、坂口先輩の口からまさかの私の名前が出てきたのだ。
「え……何で知って……」
何故、私の名前を知っているのだろう。
そんな疑問を抱いた私は、その疑問を胸に留めることなく気がつけば既に口に出してしまっていた。