罪づけ




ああ、うん。そうよね。

ふたりでいられるだけで、それだけで、いいのよね。



多くは望まない。奪うよりは譲る。そんな透吾らしい言葉。

あまりにも優しくて、私はどうすればいかわからなくなる。



彼が口にしたのはよくある表現。陳腐な台詞。

だけどそれが心から思う真実であるから、透吾のその言葉がこんなにも私の心を揺れ動かす。



甘い、……とても甘ったるい。胸焼けしそうなほどなのに、きゅうきゅうと胸が幸福で締めつけられる。

それが嬉しくてたまらない。



体を寄せて、彼に擦り寄るようにする。どうしたの? と笑いながら透吾がくすぐったそうに声を上げて、私を抱き締めた。

ないでもないわと答えればふうん? と疑いながらも声が柔らかい。



とくとく、と聞こえる心音と呼吸音。伝わる熱。

それがやけに心地いい。



苦手な甘える仕草だってしてしまいたくなる。



透吾と過ごす時間は、私にとってなによりも大切なもの。

本当に大切に思っているのに。



透吾といると、愛おしくて気持ちよくて切なくて悲しくて悲しくて悲しい。



透吾が好きで────哀しい。



私は透吾を想っていて。透吾も私を好いてくれていて。

心は確かにひとつなのに。



それなのに重ならない。
一緒にいることは許されない。

共に生きることは、罪になってしまった。



それは、タイミングとか、小さな差を原因としたすれ違い。もしかしたら一緒になることができたかもしれない。

それでも私たちは、こうなることしかできなかった。






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