ジキルとハイドな彼
窓際周辺は骨董品が置かれておらずスッキリしている。

ちょっとした家具の展示スペースくらいの広さはあるだろう。

そこにサーモンピンクの2人掛けソファと猫脚のテーブルが置かれていた。

どちらもレトロなアンティーク調のデザインでティーセットとよく似合う。

下にはペルシャ絨毯風の敷物まで敷かれてれていた。

しかし、テーブルのうえには最新型であろう薄いノートパソコンが置いてあり、その脇に本が数冊積み上げられていた。

「散らかっていてすみません」

葛城はトレイをテーブルに置くと、本とパソコンを脇に置かれたサイドテーブルへそそくさと移動させた。

「どうぞお掛けください」

促されて私はおずおずとソファに腰掛ける。

葛城が隣に座るとふんわりとコロンのよい香りが鼻腔をくすぐった。

葛城は慣れた手つきでお茶を入れる。

「いい香り」注がれる紅茶の香りに私は目を細める。

「ヌワラエリヤです」

「へ?」私が聞き返すと「このお茶の名前です」と葛城は補足してくれた。

「そういえばあなたのお名前は?」紅茶のカップを差し出してニコリと微笑む。

葛城のことを怪しい男だ、と疑っておいて、自分は名前すら名乗っていなかったとは。

「失礼しました!沖本です、沖本薫です」

遅ればせながら慌てて自己紹介をする。

「沖本さん、とお呼びすればよいでしょうか」葛城の改まった呼び方にクスリと笑う。

「下の名前で結構ですよ」

「じゃあ、薫」

いきなり呼び捨てかよ、と心の中で突っ込むものの、悪い気はしない。

やっぱり顔がいいって得だ。
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