ジキルとハイドな彼
「そちらを手に取るとはお目が高い」

葛城の瞳の奥がキラリと光る。

「それはテンの中でも最高級の毛皮を持つといわれているキテンの剥製です。昔、猟師の間で見つかったら殺しあいになるのでキテンは2人では取りにいくな、と言われていたそうですよ。まさに命懸けの逸品といったところです。もし興味がおありならここで会ったのも何かの縁、お安くしますよ?」

「け、結構です」

落とさないよう握りしめたイタチもどきをさりげなく棚へ戻す。

「心変わりをされたら、いつでもどうぞ」

そんな怨念じみたものなんて絶対欲しくなることはないだろう。

はあ、と曖昧な返事をして苦笑いを浮かべる。

「まあ、色々稀少価値の高い品が揃っているので目移りするのは分かりますが、一先ずお茶にしましょう」

このガラクタの山を価値があるだなんて、少し感覚がずれているのかと疑いたくなる。

こちらへどうぞ、と言って葛城は店の奥へと案内する。

私はおずおずとその後を着いて行った。

雑多に並べられた骨董品の合間を慎重に通り抜けて、店の奥に辿りつくと、明るい日差しが射し込んでいる。

ガラクタで溢れかえり、気がつかなかったが両手をちょうど広げたくらいの立派な窓があった。

淵は木目で覆われており錆びた金色の細い金具がついている。

外を覗くと、ガラスが古びていて少し曇りがかかっているものの、鳥の杜商店街のアーケード通りをよく眺めることができる。

先ほどの駐輪場もよく見えた。

きっと一連の出来事もここからバッチリ葛城に見られていたことだろう。

私はホロ苦い気分になる。
< 9 / 302 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop