嘘つきなポーカー 2
「ただ、あいつが何かを抱えているのは何となく分かる。俺が出会った時からずっとそうだった。」
「……。」
「あいつの瞳は、人間味が無いんだ。まるで機械的に操られているロボットみたいにね…」
「……。」
「だけどたまに、とても寂しげなんだ。俺はそれがまるでどこか助けを求めているようにしか思えなくてね…」
「……。」
「何度も俺はあいつの心をどうにかして開こうと思った。だけど無理だった。あいつは決してある一線を越えさせてはくれなかった。」
「……。」
「…でも、最近1つ分かったことがある。」
松本先生はそう言うと、由佳のほうを見た。
「由佳ちゃんの前でだけ、薫は人間らしくなるんだよ。」
「…え?」
突然出された自分の名前に、由佳は驚いたような顔をした。
「俺は由佳ちゃんと一緒に居る薫を見て、薫の心を開くのはこの子しか居ないと確信した。」
「そんな…」
「薫の抱えるものを少しでも軽くしてあげられるのは、由佳ちゃんしか居ないと…」
「でも、小野寺薫は私にも何も話そうとはしませんでした。ズカズカと踏み込むなって……」
由佳がそう呟くと、松本先生は優しく微笑みながら首を横に振った。