嘘つきなポーカー 2
「確かに、そうかもしれないね。でも、俺は由佳ちゃんがさっき話してくれたことを聞いて驚いたよ。」
「どうしてですか?」
「薫が”怖い”なんて言うのは、俺からしたら考えられないんだよ。あいつは自分の気持ちをあまり話したがらない奴だからね。」
「……。」
「薫がそうやって自分の気持ちを正直に伝えてくれたことは、物凄いことだと思うよ。」
「……。」
「やっぱり、薫の心を開くことが出来るのは、君しか居ないんだと思ったよ。」
松本先生はそう言うと、優しく微笑んだ。
「でも、どうやって…」
由佳はそう言って俯いた。
由佳の脳裏に、昨日向けられた薫の冷たい眼差しが蘇る。
全てを拒絶するような、そんな眼差しだった。
「…そうだね。薫の心に踏み込むのは、猛獣の檻に丸腰で入っていくようなものかもしれない。」
松本先生は由佳の心を読み取ったように呟いた。
「…強要してるわけじゃない。君が決めることだよ。」
「…そうですね。踏み込まなければ何も起きない。今まで通り平穏な関係で居られるのかもしれません。」
由佳は遠くを見ながら呟いた。
「そうだね、由佳ちゃんのことを考えたらその方が良いのかも「だけど。」
由佳は松本先生の言葉を遮った。