王様とうさぎさん
 


「もうっれつな勢いで流されてるっ!」

 音を立ててロッカーを閉めながら莉王が言うと、潮は笑う。

「いいじゃないの。
 私も流されたいわ

 いい男に限るけど」

 莉王は冷たいロッカーの扉に手を当て、すがっていたが、そのまま滑り落ちるようにしゃがみ込む。

「それに、なんかもう私、我が儘ばっかり言っちゃってさー」

「いい傾向じゃん。
 お互い気を許してきた証拠でしょ。

 いつまでも緊張してたら、続かないって」

 どんなに忙しい朝でも、きちんとメイクしている潮を見上げ、女の鏡だ……と思いながら、莉王は訊いた。

「潮でも、緊張することあるの?」

 常に落ち着いた大人の女風の潮は、誰に対しても、余裕を持って接しているように見えたのだが。

「そりゃ、好きな人の前ではねえ」

「真人の前では緊張しないね」

「ああ。
 真人くんは、可愛いってだけだもの」
と言いながら、潮はマスカラをロッカーの鏡でチェックし、扉を閉める。

 やはり、本気ではなかったか、と思った。

 潮と真人じゃ、お姉様と遊ばれてる大学生みたいだもんな。
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