王様とうさぎさん
 


 会社の地下の駐車場に着くと、真人はすぐに車を降り、大きく伸びをしていた。

 サッカーしているときは、実に動きのいい彼だが、やはり、狭いところは苦手らしく、じっとしていると疲れるようだった。

 後について行こうとしたとき、允に腕をつかまれた。

「なんですか?」
と振り向くと、

「いやあの……
 今日はちょっと、あっちへ寄って、帰らないか」
と允は言い出す。

「あっち?」

 そう問うと、マンションに取りに行きたいものがあると言う。

「そうですか。
 わかりました。

 じゃあ、向こうに寄ってから帰りましょうか」

「別に食事もいつも家でとらなくてもいいんだぞ」

「そうですが、お義母さんのご飯、食べられるのも後少しかと思うと——

 ああでも、毎日じゃ、お義母さんもお疲れですかね。

 たまには何処かで食べて帰ります?」

 そう言いながら、允の家に電話すると、由莉子は、

「それはそれでもいいんだけど。

 今日の支度、もう下ごしらえしちゃったのよ〜」
と淋しそうだ。

 由莉子にそんな声を出されると弱い。
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