王様とうさぎさん
「でも――
 なんだか言わなさそうです。

 もう気が済んだみたいに、成仏しそうでした」

 しかし、自殺でなかったのなら、允がそこまで苦しむ必要はなかったのでは。

 いや、この人のことだから、殺される前に止められなかった自分を責めるだろう。

 同じことだ。

「莉王ちゃーん、允ー。
 ご飯冷めるわよー」

 殺人事件から一転、呑気な声が聞こえてきた。

「いけない。
 行かなきゃ」
と立ち上がろうとすると、允が腕を掴む。

「允さん、お母さんが呼んでますよっ」

 允は黙って、莉王を見つめていた。

 どきりとしてしまう。

「……行こうか」
と言って、手を離した允は先に部屋を出く。

 自分が急ごうと言ったくせに、その背中をなんとなく見送っていると、允がぼそりと呟くのが聞こえてきた。

「うさぎの王様だな」

 えっ?
 なにが?
と思ったときには、允はもう、隣の部屋からも居なくなっていた。
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