王様とうさぎさん
 つかつかと乱闘している三人の許に行った。

 深呼吸すると、左を向き、一度、身体を沈ませた。

 そのまま、跳ね上げるようにして、振り上げた右足で、女のナイフを蹴り落とす。

 着地したその反動を利用して回した反対の足で女の肩を強打して、バージンロードに吹き飛ばした。

 子どもの頃、よく和子や横暴な兄をこらしめた技だ。

 飛ばされた女は、なにが起こったのかわからず、きょとんとして座り込んでいる。

「やるのなら、他所でやって!」
と莉王は叫んだ。

 まだドレスの裾は掴んだままだった。

「せっかく、お義母さんたちが送り出してくれたのにっ。

 せっかく、允さんが準備してくれたのにっ。

 せっかく、みんなが来てくれたのにっ」

 明日も結婚式があるのに、教会でやりたかったという私の我が儘をみんな聞いてくれた。

「城ヶ崎さん殺すのなら、後にしてっ」

「はっ、はいっ」

 座り込んだままの女は迫力負けして、反射的に返事をしたようで、なにを言われたのかもわかってはいないようだった。

「こっちおいで」
とやさしく忍が女に手を差し伸べ、外に連れ出す。

「すみません。
 続けてください」

 莉王はドレスの裾から手を離し、今、自分が殺せと言った城ヶ崎に向かって言った。
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