王様とうさぎさん
 一緒に中に入りながら、真人に訊く。

「このお店、この近くに出来たってやつ?」

「そうそう」

「夜中までやってるって珍しいわよね」

「そうそう」

 ……これだから、酔っぱらいはな。

 まあ、泣き上戸よりはいいか、と何を訊いても機嫌のいい真人に思う。

「呑み屋街には結構、夜遅く開いてる店、あるけどな。

 花屋もあるし、ぬいぐるみとかも売ってる。

 お店のおねえさんに持ってく用の」

 ああ、と答えながら、呑み屋という言葉に忍を思い出していた。

 あの店、純粋に呑みに行ってみたいが、なんだかもういけないな、と思った。

 真人は部屋に入るなり、莉王の愛用のクッションが抱いて、横になってしまう。

「ああ、私のクッションが……」

 酒臭くなるからやめてくれ、と思いながら、水を渡した。

 うう。
 明日、干そう。

 真人は水をあおると、また寝てしまう。

 その少し丸まった背中がなんだか元気なく見えて、

「試合、負けたの? 今日」
と訊いてみた。
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