王様とうさぎさん
 すると、酒臭い真人は、うやうやしく、ケーキの箱を差し出してくる。

「貢ぎ物です。
 入れてください、王様」

「そのひとことで、今、たたき出してやろうかと思ったわ……」

 今、王様と呼ばれると、あの、最初に倉庫で会ったときの允を思い出すからだ。

 しかし、ケーキはコンビニのじゃなく、ちゃんとした店のだ。

 聞いたことがある。

 この近くに深夜まで営業してるケーキ屋さんがあると。

 まだ行ったことはないが、結構美味しいらしい。

「じゃ、水でも呑んでって」

「はいっ。
 王様っ」
と真人は最敬礼する。

 これだから、酔っぱらいは、と思いながらも、いそいそと箱を手に、中に入った。

 ……決して、ケーキにつられたわけではない。
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