キミがこの手を取ってくれるなら
私は夢を見た。
光の中から、誰かが私に向かって走ってくる。私のことを見つけると、笑顔でギュッと抱き締め、何度もキスをしてくれた。
「好きだよ」
と囁くその声は、聞き覚えがないのに私の知っている声のような気がして……そして、とても懐かしかった。
***
目を覚ますと頬が固まっているように乾いていた。どうやら泣いてしまったらしい。
寝ている二人に気づかれないように、そっと寝室を抜け出して顔を洗った。
「昨日は楽しかったな…」
そう呟くと自然に頬がゆるむ。
朝食でも作ってあげようかと思ったけど、実家暮らしの高校生にそんなスキルはないので、すぐに諦めた。
リビングのソファーに座り、ぼんやりしていると2人が起きてきた。
「…お腹すいた。何か食べたい。」
「奈子が作れば?」
「できないもん。じゅんたが作ってよ。」
「できるわけないだろ。」
そういえば、この人は実家暮らしの大学生だった…。
そう言う私達に「はいはい。承知しました。」とやれやれと言った様子で奏ちゃんは手際よくハムエッグを作ってくれた。
昨日もらったパンを囲んで、昼食に近い時間に朝食を食べる。
どのパンも美味しくて、一つ一つ丁寧に作られていることが分かる。志帆さんの人柄にまた触れたような気がした。
おいしい、おいしい、と次々と口に運ぶと
「奈緒さすがに5個目はまずいだろ。」と奏ちゃんに止められ、「奈子、食べ過ぎて重くなったらもう車に乗せてやんない。」と続けてじゅんたに言われた。
「ひどいよー!」と言いながらも私は笑顔だ。
久しぶりにちゃんと笑ったような気がした。