~SPの彼に守られて~
「こ、これも契約に入っているんですか?!」
「鷲宮さんの判断で奴らにお前の部屋が知れわたっている以上、お前の部屋に戻るのは危険とされたから、暫らく俺の部屋で過ごすことになった」
「そんな……」

 私はただ帰り道を歩いていただけなのに、追いかけられて、部屋にも戻れないなんて辛すぎて、泣きたくなるのを堪える為に唇をキュッと噛みながら鼻をすすると、カウンターの机の上に次々と料理が置かれ始めた。

「お嬢ちゃん、先ずはご飯食べてしっかり体力つけなきゃな。足が動かなかったら大変だぞ」
「あー、腹が空いた」

 鷹野さんは先にカウンター席に座るけど、私も食べてもいいのかな?

 するとお腹の音が盛大に鳴っちゃって、最悪…、鷹野さんは私の専属SPであっても1人の男性だし、その男性の前でお腹の音が鳴るなんて、泣くよりも恥ずかしいじゃん。

「お前より、腹の方が素直だな」

 鷹野さんは肩を震わせながら笑っているし!!

「こ、こ、これはずっと何も食べてなかったからです!いただきます!!」

 そんなに笑わなくてもいいじゃない!

 お箸を持って手を合わせて芋の煮物を一口食べると、体全体に味が広がっていくのが分かる。

 普段はコンビニのお弁当や外で簡単に済ませちゃうから、こうした料理を食べたのは久しぶりなような気がした。

 鷹野さんは、お父さんに注がれた烏龍茶が入ったグラスに口を付ける。

「鷹野さんはお酒を飲まないんですか?」
「此れでも警護中だから、酔ってたらお前を護れないだろ」
「あっ…」

 そうだった…、警護中だというのを忘れて夢中でご飯を食べていた。
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