SPの彼に守られて
「う~ん、このレイアウトだと解りづらいかな」

 数値の一覧表だけなら表計算ソフトを使った方が便利だけど、文章と一覧表を併せるなら文章作成ソフトを使ってみた方が打ち合わせしやすいかな?

 マウスとキーボードを使いながら何度もグラフの図形を変えてみるも、しっくりこない。

「かなり悩んでるね。どんな風に作ってるの?」

 龍崎さんがPCの画面を覗こうと体を寄せてくるんだけど、その距離がとても近すぎるような気がしてきて、体が漫画でよく表現される時に使われる『石みたいに硬直する』状態だ。

 ち、近い!龍崎さんは平然としているけど、こんなに近いのに男の人ってあまりこういうのは意識を持たないのかな?

「うーん、数値の高低差を分かりやすくするなら、折れ線グラフが見やすいかな?―…って、吉野さん、聞いてる?」
「は、はい。折れ線グラフですよね」

 危ない危ない、折角龍崎さんがアドバイスをしてくれているのに至近距離にドキドキしていたなんて言えない。

 気を取り直して3件分のテナント料のグラフを作成し、手が空くと同じグループの人のサポートに回り、伝票の数字を帳簿に転記をしていくんだけど、いつも通りの時間の流れに、昨夜の自分が見知らぬ男たちから追いかけられていたのが不思議でたまらなくて、なんだか変な気分。

 暗い道を全力疾走して、交番に逃げ込んだら民間SPを紹介されて、自分の住む部屋に戻れば覆面マスクの男たちに襲われそうになったり、これが一体いつまで続くのかな………。

 下唇をきゅっと噛みながら、パソコンのキーボードを打ち続ける。

「これでよしっと。次は打ち合わせの準備をしなくちゃ」

 それでも仕事は待ってくれないし、帰りは鷹野さんたちが迎えに来るから残業をしないように仕事を進めなきゃ。
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