~SPの彼に守られて~
「乗るぞ」
「え?あ、あの…」

 鷹野さんは私の返事を待たずに右手を掴むと、巨大観覧車のチケット売り場に歩いていく。

「大人2枚」
「かしこまりました。10分間の素敵な夜景をお楽しみください」

 鷹野さんがチケット売り場の店員に代金を払い、乗車券を受け取った。

「鷹野さん、チケット代を払います」
「いいって。ここは男に払わせろ」

 しまった…、こういう時って素直にありがとうございますって言うのが正解だったかも。

 乗車口に行くとカゴがゆっくりと近づいてきて、鷹野さんにサポートされながらカゴに乗ると、少し離れて座った。

『ご乗車ありがとうございます。本日の天候は曇りはなく、都心のタワーまでご覧いただけますので、ごゆっくりと当観覧車から見える景色をお楽しみください』

 天井付近にあるスピーカーからアナウンスが流れ、カゴがゆっくりと頂上に向けて上昇していく。

 そこから見えるのは巨大観覧車の近くには船の帆をイメージされた外資系ホテルがあり、その側にある湾岸には遊覧船が停泊していた。

 あの遊覧船はどこを周遊するのかな?船から見える景色もきっと綺麗だろうし、それを想像するだけでも胸が弾む。

「やっと笑ったな」

 鷹野さんの方に顔を向けると、普段は眉を顰めたり厳しい表情をしているのに、今は優しく微笑んでいて、この綺麗な景色が後押しをしているのか、せっかく蓋をしていた気持ちが溢れそうになる。

 今この場で溢れそうになる想いを伝えれば契約違反となって、鷹野さんには警護をしてもらえなくなるけれど、けれど……、そうか、私って鷹野さんのこと……
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