ふりむいてよキャプテン
そうと決まったら、善は急げだ。


「あ、小野くん帰ってきたよ。
いこ、さほちゃん」


タイミング良くというか悪くというか、部室の外から小野くんとにっしーの声が聞こえてきたので、さほちゃんの手をひっぱっていく。


「小野くん、さほちゃんが小野くんの番号知りたいって。
もちろんいいよね?」


前置きもなにもしないで、単刀直入に用件のみを伝えて、私より10センチは背の高いさほちゃんの背中を押して小野くんと近づける。


「え?俺?
いいけど......」


不思議そうな顔をしていたけれど、すぐに部室からスマホをとってきて、さほちゃんのもとに戻ってくる小野くん。

顔が可愛いだけじゃなくて、モデルみたいな体型のさほちゃんと、色黒で背の高い小野くんは悲しくなるくらいにお似合いだ。


それを遠巻きに見ていたにっしーにいいの?と口パクで聞かれて、私も口パクでいいの、と返す。

いいんだ、どっちみち小野くんとは付き合えないし。


小野くんもまんざらではないみたいで、照れたように笑いながらスマホをいじっている。


なに、その反応......。
私にはいつも無愛想な感じなのに。


でもそうだよね、さほちゃんみたいな可愛い年下の女の子に好意を持たれたら、小野くんだって悪い気はしないよね......。

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