【完】幸せをくれたあなたに。
でも、目の前でわけもわからず泣かれてもね……
「ま、松井くんっ!」
「ん?」
廊下にいた松井くんを私は急いで呼び止めた。
「その……さっき言ってたこと……」
「えっと、泣いてないって?」
ウンウンと頷く私。
「そのこと、藍那には言わないで!」
さっき泣いてないと言ったくせに、どっちなんだってきっとそう思っているだろう。
でも、例え泣いてないと言っていても、松井くんは信じないだろう。
「うん。言わないよ」
その言葉にホッとした私は、「ありがとう」とだけ伝えて教室に戻った。
「琴っ!」
藍那が私を呼ぶなり、なにか言いたそうな顔をした。
「どうしたの?」
「あの……さ、今日も一緒に手伝ってもいいかな」
と首を傾げながら、尋ねてくる。
──ズキ……
胸が、痛い。