晴天のへきれき?
「退勤を出勤で押してしまったみたいなんですが」

「ああ。珍しいミスをしたものだね」

ニコニコと手を差し出すダンディに、勤怠カードを渡す。

それにサラサラっと今の時刻を書いて、ハンコを押してもらう。

「お手数おかけします」

カードを受け取って一礼する私に、ダンディはにこやかに頷いた。

「朝倉君。これから帰るなら、一緒に飲みにでも行かないかね?」

御冗談を。

「アハハ。お断りします」

ダンディ室長。

またの名を、プレイボーイ杉下。
10年連れ添った奥さんと、中学生になるお子さんがいながら、未だに浮名を流すプレイボーイ。
手をつけられたOLはたくさんいるらしい。

まぁ、解らなくもない。

綺麗に切り込まれた口髭。
40代に有りがちな肥満もなく、スーツ姿もいつもお洒落だし、人柄は穏和そのもの、きっとなびく子もいるだろう。

「朝倉君はいつも釣れないねぇ」

釣られてたまるか。

「室長?」

「なんだね」

「いつか刺されますよ?」

私の苦言に、さすがの室長も笑顔で凍り付いた。
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