蜘蛛の巣にかかった蝶のようで

「水谷が幸也と付き合ってた時、俺、狂いそうで……。」

築山君は私の目を見ようとはしなかった。

「俺に……してよ……。」

次に私を見たその目は強かった。

何も言えなかった。

「怖がらせてごめんな。どうかしてんのは俺が一番わかってんだ。ただ!……」

そういってまた築山君はうつむいてしまった。

「築山君……。」

「…………。」

「……今日は……ありがとね。優しくしてくれて。」

「……っ!!」

何かを言いたそうな目。

「それじゃ……。」

その場から逃げたくなって家へ走って帰った。


築山君は追ってこなかった。
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