あふれる、想い

願い

―ren―


目の前には久々の岳志


「帰って来る前に連絡しろよな」


怒ってるけど笑ってる岳志

俺は苦笑いを返した


「どうせ辻が1番だったんだろ?!」


「さすが岳志だな」


ニヤニヤする岳志に
また苦笑いを浮かべた



広い岳志の部屋

黒いソファにの背もたれに頭を乗せて
天井を眺めた



「でっ、さっき電話で言ってた事だけど…」



「あぁ。愛結花は俺を待ってなかった」



「そんな事ねーよっ!!!!」


岳志の強い口調に
俺は目線を岳志に向けた



「蓮がいなくなって辻は見てられないくらい
かなり落ち込んでて、明日香も心配してて…
無理に笑ってるのが痛々しかった」


俺は岳志の苦悩な顔を見て

どれだけ愛結花を傷つけたのか…

それを考えると苦しくなった


誰よりも


何よりも


俺が


…1番悪い


「だから愛想つかされたんだろ?」


俺との事考えてくれ


苦肉の策だった


でも…答えはわかってる


待たせすぎた…


だから…無理だ


1年半…親父は早く帰国出来た

そう言ってたけど、俺には長かった

きっと…愛結花にも…


岳志は言いにくそうに口を開いた


愛結花を見ていられなくて

躊躇う愛結花を原田と焚き付けて

上條とくっつけた事



「…ごめんな」


「いいんだよ
岳志も原田も悪くない
それに上條の気持ち知ってたし
そうなる可能性は高いって思ってたしな」


「でも…辻の心からは蓮は消えてないと思う」



「そんな事ないだろっ」


俺は目線を下げて
鼻で笑うしかなかった


「諦めるのか?」



「どうしようもないだろ?
ただ想い続けていくよ
もうこれ以上
俺の我儘で愛結花を振り回したり
傷つけたりしたくねーよ」



岳志はそれ以上
何も言わなかった



一度部屋を出て戻った岳志の手には

大量のビールがあった



俺達はそれを飲んだ

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