大海原を抱きしめて



学生時代に見た歴史の資料集に出てきてもおかしくないような雰囲気を漂わせる作りで、室内は靴を脱いで各部屋を自由に見学できる。

その郷土館の中で唯一、玄関から一番奥の小部屋だけはお客さんには公開せず、私たち職員の仕事部屋になっている。んだけど。

その部屋が簡素すぎ、というか、孤独感を際立たせるというか。

だからみんな、ここでの勤務は好きがらない。

天井では常に木がきしむ音。タイムトラベル感がすさまじい。

誰もが、あらぬものが見えたらって心配をする。

私は、一人って気楽だから気にはしないけど。

ま、それとこれとは話が別っていうか。

たった一人、ここで一日を過ごすのも、いろんな意味で大変。

布団でも持ってきて、寝ていようかと思ったことが正直何度もあるけど。

知名度がまだまだ低く、見学者はなかなか来ないから、尚更。
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