大海原を抱きしめて
11.忘却のススメ


11.忘却のススメ


秋も終わりに近づいてきた。

山間部では初雪が降った、とニュースで報じられたのは何日か前。

カーディガンを羽織らなければ、オフィスにいても寒い。

東京に出ようかと検討し、年度末での退職を考えていたことを、谷上さんには素直に打ち明けられた。

焦っていたのかもしれない。

自立という言葉に、妙に神経質になっていた気がする。

自立なんて、どこにいたって意識次第でできる。

谷上さんはそういってくれた。

だから今は、職場の居心地のよさや地元のあたたかさに、甘えていよう。

それが、私が出した答えだった。

谷上さんはいつも、見ていないようで私達のことを見てくれてる。

ただし、良くも悪くも。
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