大海原を抱きしめて


昼の休憩を終えて事務所に戻ると、佐伯さんが荷物を届けて居座っていた。

話し相手の谷上さんが、何やら企んでいる顔で私を呼ぶ。


「佐伯さんのことどう思ってる?」


なに言ってんの!とあせるのは、佐伯さん。

事務所には誰もいないけど、奥には笠岡さんがいる。


「どういう意味でですか?」

「そりゃ、そういう意味で」


つまり、男として見てるか?ってことでしょうか。


「顔は普通だし、優しいし、大事にしてくれるよ、きっと。年だって5歳しか離れてない。ちょうどいいんじゃない?」


5つしか離れてない。ちょうどいい。

それが世間の基準なんですか。

じゃあ私の恋は、間違ってる?

ずきずきと痛む心。

二人に、私を苦しめているつもりはないんだろうけど。
< 353 / 435 >

この作品をシェア

pagetop