大海原を抱きしめて
エピローグ


エピローグ


日に日に冬の気配が近づいてくるこの街。

生まれた時からずっと知ってるはずなのに、ちょっと違う世界に見えるのは、私の中身がちょっと変わったから。

そう思うと、胸が苦しくなる。

ようやく元気になった笠岡さんは、今日から仕事に復帰する。

ほぼ毎日、ハナちゃんの散歩があるからと笠岡さん家にお邪魔して、ついでと言いつつ本来の目的であるご飯作りをして。

幸いにも私に風邪がうつることはなくて笠岡さんは安心していたけど、なんだか私はちょっと寂しくて。

キス、したのに。

あのキスはやっぱり夢だったのかな、って思ってしまう自分が悲しい。

あれから笠岡さんは、一度も私に触れない。指先でさえ。

好きだとも言わないし、それを匂わせることもない。

私は何をしてるんだろうっていう虚無感が否めないまま、今私は出勤している。

すっかり荒れ模様の日々が続く、海を横目に眺めながら。
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