櫻の王子と雪の騎士 Ⅱ
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どんなに辛いことが起こったとしても
太陽は変わらず昇っては沈んで行くもので。
国外追放を言い渡されて、もう、二日が過ぎていた。
眩しい朝の日差しが、嫌味なほど美しく辺りを照らす。
ルミアはむくりと、自室のベットから体を起こし、朝日の入り込む窓の外を眺めた。
今夜にはこの国を出る。
これはジンノの判断だ。
三日の猶予を待たずに、出ていくという。
おそらく、シェイラの婚約発表会をルミアが見なくて済むように、ジンノなりに配慮してくれたのだろう。
あと数時間でこの国を出ていかなければならないなんて思えないくらいいつも通りの朝の光景が、そこには広がる。
昨日は荷物の整理とジンノの残った仕事の手伝いであっという間に過ぎていった。
だから特殊部隊の皆にはちゃんとお別れをしていない。
(皆に、お別れとお礼言わなくちゃ...シェイラさんにも...)
誰にも聞こえないくらい小さな声で溜息をつき、ルミアはベッドを降りた。
自室を出れば、キッチンに兄の後ろ姿がある。
何でも完璧にこなす自慢の兄。
それは料理も例外無く。
美味しそうな香りが鼻腔をくすぐる。
「おはよう兄さん。早いね」
「おう。ルミアか、おはよう」
とろけるような甘い笑みを向けるジンノ。
それを見て、ルミアの心はふっと軽くなる。
きっと安心するのだろう。
「兄さんが朝ごはん作るなんて、珍しいね」
「早く目が覚めたからな。たまにはイイだろ」
「うん。兄さんの作るのはなんでも美味しいから私は大歓迎」
いつもと同じように言葉を交わし、
いつもと同じような穏やかな笑を向け、
まるで何もなかったように1日が始まる。
けれど、二人がこの国を去る時は、尚も刻々と迫っていた。