ラグタイム
「だけど、ことを終わらせたからと言ってやめた生徒たちが戻ってくる訳じゃない。

武人ももう2度とあんな思いをしたくないからって教室を閉めた。

その時に朝貴が武人を『ラグタイム』に誘って働き始めたって言う訳。

シェフならよっぽどのことがない限り客の前に顔を出さないし、ワインの知識に関しては朝貴に教えて客の前で説明させればいいだけの話だからな」

藤本さんは息を吐くと、
「あの事件以来、武人は女性不信になっちまってな。

彼女を作るのはもっての外、女に料理を教えることもダメになっちまったんだ」
と、言った。

「そうだったんですか…」

さっきからこのセリフしか言っていないような気がする。

でも、他にどう言えばいいのかあたしにはわからなかった。

生徒の女性にストーカー行為をされたことがきっかけで、武人は心にトラウマを抱えてしまった。
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