ラグタイム
あたしが男だったから武人は教えてくれた訳だけど、
「もし…あたしが女だってことが武人にバレたら、どうなっちゃうんですか?」

口に出したとたん、あたしの胸がズキズキと痛み出した。

「俺にそんなこと聞いてどうする?」

そう聞き返した藤本さんに、
「そうですよね…」

あたしはそう答えることしかできなかった。

「夕貴がそう聞くってことは、まさか…」

「ち、違いますよ!」

藤本さんの言葉をさえぎるように、あたしは首を横に振って否定をした。

「あたしは自分の身を心配して言っているんです!

だって武人にバレたら、誰があたしに料理を教えてくれるって言うんですか!?」

早口で言い返したあたしに、
「何だ、そう言うことか」

藤本さんはホッとしたと言うように胸をなで下ろした。
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