ラグタイム
「気づいてたんだ。

お前が武人に恋をしていたことに」

そう言った藤本さんに、あたしの心臓がドクン…と変な音を立てた。

悪いことをしたと言う訳ではないけど、変な音を立てた心臓にあたしは手で胸を押さえた。

「自分で気づかなかったのか?

お前、仕事中に武人のことをずっと見ていたんだぞ?」

「…全く」

そんなこと、自分でわかる訳がないじゃないの。

武人のことを見ていたなんて、自分で気づく訳ないじゃないの。

呟くように返事をしたあたしに、
「お前が武人のことを忘れられるまで、返事をずっと待ってるから。

明日でも明後日でも、それこそ何年先でも…」

「ごめんなさい…」

藤本さんの言葉をさえぎるように、あたしは謝った。
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