今夜、上司と恋します
咄嗟に私は広瀬の洋服の裾を掴む。
そうしなきゃ、広瀬が佐久間さんに突っかかりそうな気がしたからだ。
佐久間さんは昨日の出来事を何も知らないんだ。
何かあったんだろうって事ぐらいしか知らない。
同情で私を優しく抱いてくれただけ。
「広瀬、坂本。おはよう」
「……おはようございます」
「おはようございます!」
佐久間さんは私達に気付くと笑顔を向ける。
広瀬はぼそっと挨拶していたけど、それを誤魔化す様に私は元気よく挨拶をした。
それだけじゃない。
もう、大丈夫だってアピールもしたかった。
それ以上言葉を続ける事なく、佐久間さんはすぐに自分の席へと向かう。
「……」
「広瀬」
「ごめん。ヤキモチ」
「……」
「あはは。勝てる気がしねー」
「広瀬は広瀬でいいよ」
「それじゃ好きにはなってもらえないじゃん」
「……」
「あー、ナシナシ。ごめん。責めたいとかじゃないから。
顔を曇らせたいわけじゃないんだよ」
「いや、なんか気を遣わせて私こそごめん」
「俺、今のプロジェクト絶対成功させるわ。
したら俺とデートしてよ」
「うん、わかった」
「まじで?」
「うん」
「デートだからな。いつもみたいなノリじゃないからな?
絶対女の格好して来いよ?」
「普段から女の格好ですけど」
「いや、坂本基本的にパンツスタイルだから。
スカート履いて来いって事」
「えー」
「却下。俺やる気になって来た。頑張るわ!それじゃ」
「うん、頑張れ」
そう言うと、広瀬は自分の席へと戻って行った。