今夜、上司と恋します

「いやー。倒れたんでしょ?
こいつねえ、その電話貰ってからずーーーーーーっとソワソワしてたの」

「え」
「おい!野々村!」


焦った広瀬が野々村さんの口を手で塞ぐ。
だけど、その手に野々村さんはサクッと噛みついた。サクッと。

それにも驚いた。


「うわ、いて!ふつー噛むか、お前!」

「だって、急に手が来るから」

「お前が変な事言うからだろ!」

「俺は事実を言ったまでだ」

「いや、違、…わなくはないけど、いやだから」



とてつもなく動揺している広瀬はしどろもどろだ。
こんな広瀬、中々見れない。



「心ここにあらずで、使い物にならないから帰してやったのは誰のお陰かな~。ん~?」

「……野々村様のお陰です」

「あははっ、何それ。広瀬」



真っ赤になりながら小さくなる広瀬に、私はもう堪え切れなくて吹き出した。
私が笑った事で、更に広瀬は恥ずかしそうに顔を逸らしている。


「って事で、もう無理しちゃダメだからね。蛍ちゃんは。広瀬の為にも」

「ふふ、うん、わかった」

「ならよろしい。よし。広瀬、そろそろ打ち合わせだろー?」

「……ゴホン。ああ、もうすぐだ」



広瀬はわざとらしく咳払いをすると、腕時計を確認した。
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