今夜、上司と恋します
「じゃあ、今日の会議はここまでで」
佐久間さんがそう言うと、各々が資料を持って立ち上がる。
私も立ち上がったところで、呼び止められた。
まさかの、佐久間さんに。
「坂本」
「え?あ、はい」
佐久間さんに呼び止められるなんて、本気で思ってなかったから目をぱちくりとさせる。
こうやって佐久間さんに会社で話しかけられるなんて、滅多にない。
佐久間さんは今日もぴしっとしたスーツを着ている。
それに30代には見えないオシャレな立ち振る舞い。
体にフィットしているスーツ、センスのあるネクタイ。
さり気なく付いているネクタイピン。
無造作に散らばった短髪。
“いつも”の佐久間さんだ。
「今日の予定は」
「今日の…予定ですか?」
「何か抱えてる案件あるか」
「えっと、特に急ぎはないですけど」
私は今日やる事を考えながらそう答える。
絶対に今日やらなきゃならないって仕事はない。
だからといって、後回しにすると自分が苦しくなるだけだが。